若さの秘訣が一目瞭然

◇A心配しているんですね、国立大学の医学部のヒエラルキーの中で。
そういう縄張りから自由なT大学医科学研究所とぜひ協力してください(笑)・◇K好きにやらせてくれれば私はいくらでもやります。 ◇A学部は同窓会的でいろいろな人がいるから難しいですね。
やはり研究所のように、学閥から根が離れているところでないと難しいでしょうね。 ◇K日本には新しいアイデアでやらせてみようという温かい支援がない。
失敗を恐れてお金を出せない。 ジェラシーとかそういうのではなく、「おお、元気にやつとるかね」と言ってほしい。
「Nm、アメリカに行くの?。 がんばってやってちょうだいよ」という寛大さが日本の社会にあればもっともっとがんばれますのにね。
◇Aいま日本のシステムを変えようという人たちが集まって、別にけんかをするのではなくてスッと立ち上げれば、うまくいくような気がします。 国際企業も国内企業も、皆、新しいやり方が必要だと思っているわけですから、さらりとやれば変わっていくのではないですか。
◇Kそう、口をはさまないで温かく、「勝手にやってちょうだいよ」と言ってくれないと困るんです。 足の引っ張り合い、行政指導、裁量行政、横並び、護送船団はもうだめです。
イノベーションを温かく見守る心構えが必要です。 ◇Yジノミックスとか、バィオインフォマティックス(生物情報科学)は、医療にとってプラスになることは間違いないと思うのですが、21世紀にどういうインパクトをもたらすのか。

または産業として成り立つのか。 この分野においてもアメリカがかなり先行していますが、日本はどこまでキャッチァップできるのか。
そのあたりを締めくくりにお話しいただけますか。 ◇Nいまは集団の医療ですから平均的な医療ですが、これからは個の医療になってくると思います。
診断も治療方法も、レディメイドではなくてオーダーメイドになってくるでしょう。 そのときには、バイオインフォマティックスはDNAチップによる診断のときでも非常に威力を発揮します。
Hx研究所もいまそれをめざしていて、ある程度見通しがついてきました。 これからはまず診断の仕方が違ってきます。
まず遺伝子を見る。 それによって個の問題を診断する。
ただしそれが即遺伝子治療には結びつかないと思います。 ◇Yその人のジェネティックスのデータベースが加わるということですね。

すると、糖尿病になりやすいとか、肥満になりやすいとか、そういうことが予想でき予防にもつながる。 ◇Nその場合にプライバシーの問題があります。
それと並行して医療倫理の問題が出てくるでしょう。 あと生命保険の問題もあります。
現実にアメリカでは先日、Cr大統領が差別をしてはいけないとか言ったでしょう。 もう入ってきているわけです。
◇Yそれと分子生物学というか、遺伝学の部分が非常に重要になってきますでしょう。 これからは個のレベルでのデータベースづくりが進み、診断と臨床に結びついてくるということになるわけですね。
◇Nそういう問題を考えておかないといけないですね。 ◇A同時に研究の論理が逆転する。
生物学は、ある表現型と生物現象があって、その根底にはどういう遺伝子が働いているのか明らかにします。 ところが初めに、この人の遺伝子型はこうだということになり、ではそこからどういう表現型の違いになるのかを探す。
研究のベクトルが逆さまになるんです。 ◇N現実にそうなってきていますからね。
◇Aテクノロジーが進んできたので、どうやって必要な情報を得るかという方法が変わってきたんです。 ◇Yそれに合わせて、医学教育も変えていかないといけないということにもなりますね。

情報量がここに来て膨大な量になり、かえって意思決定が難しくなってくる。 それを判断できるお医者さんを育てないといけない。
◇Aそれも大事です。 ◇Kそれからやはりお医者さんのいちばん大切な役割は何かという問題になりますね。
患者さんに対してどうするかということでしょう。 へ理屈をこれるのはいいけれども、患者が幸せでないのでは困るということがあります。
◇Aバイオテクノロジーでは、我々は情報分子をどうやって分子設計するのかという問題があります。 新しい酵素とか遺伝子を自由にデザインする原理を見つけることによって、人工酵素と人工触媒の合成に結びつく。
◇N人工抗体とかも含めてですね。 ◇A産業的なポテンシャルとしては、ジノミックスでは現存するものが進化の過程でこうできてきたということを解釈するだけです。
しかし、その原理がわかれば、遺伝子そのものをこういうふうに設計しようという方向に進みます。 3次元的なタンパク質の識別機能そのものをどのように変えていくかという根本的技術は、酵素をつくり出す新しい原理として、21世紀の新規産業を起こすものであると思います。
それは医療のワクを超えた化学、工学を含む産業です。 医療やヒトの遺伝子の問題では倫理の歯止めがありますが、それを超えて遺伝子そのものを設計する原理を探求する課題があります。
ですから、ジノミックスや遺伝子治療を超えて、遺伝子システム自身をデザインすることは、医学を超えたインパクトを持ち、おそらく21世紀にはこれが実現するのではないかと思いま◇Yそうすると、生物学者の役割自体も変わっていくでしょうし、医師の役割も変わってくるでしょうね。 そしてバイオベンチャーの出番が増えてくることになる。

◇N個の医療はどうなってくるかというのは非常に重要だと思います。 その中でバイオインフォマティックス、チップの問題も出てくる。
そうすると、そこに何が必要であるかというとやはりベンチャーである。 ◇Yそういうことでしょうね。
1つはベンチャーの起業に非常にいいチャンスではないかという気がします。 21世紀こそ、バイオベンチャーの世紀ともいえるのではないでしょうか。
◇Nバイオベンチャーとエレクトロニクスが融合してくるので、バイオエレクトロニクスみたいになって、融合型のベンチャーがこれから出てくると思います。 ◇K私は思うんですが、いま交通と通信はすごく便利になりました。
これからはバイオが大事だといいますが、バイオを使っていったい我々にどんないい思いをさせてくれるかがいちばん大事なんです。 要するに通信と交通で世界中をいろいろ見られる。
それからバーチャルリアリティもコンピュータで見られる。 けれども結局ものを買わなければいけない。
買いたい人が増えて産業に活気が出る。 経済が潤う。
だから、バイオは人間をどうハッピーにしてくれるのか。 このメッセージを伝える。
そこがすごく大事だと思います。 ◇N結局は、人間の存在感に行き着くものだと思います。

何のために自分はいるのか。 それが1つの大きな問題になってきます。
◇K人間の生において、みんながハッピーだと感じるのは何なのか。 いずれはみんな100〜120歳まで生きることが可能になりますが、でも必ず死にます。
100歳まで元気で生きていたい。 では、何をしていれば元気だという満足感があるのか。
それが非常に大事なんです。 ものが豊かになっても、人間はバイオでいったい何がハッピーになるのか。
いま、みんな何がほしいのか。 それに応えるのがバイオの使命だと思いますが、それは何なんでしょう。
不老長寿は不可能ですからね。